平成12年度 研究報告 大分県産業科学技術センター
メンテナンスを考慮した木製脚物家具の研究
一木材とウレタンフォームの分離しやすい接着手法一
古曳博也・豊田修身・山本幸雄
日田産業工芸試験所
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要旨
木製聞物家具(椅子、ソファ)の座面クッション材にはウレタンフォームが一般的に使用される∴修理等のメンテナン
スを想遥して容易に分離できる木材とウレタンフォームの接着手法について検討した.合成ゴム系溶剤型接着剤を塗布づ
る前処理として木材表面にはポリエチレングリコールの水溶液を塗布乾燥させた。接着幅25Ⅲ氾の試験片を1紺C5分熱風
加熱した場合5。81Ⅳのはく離接着力(平均値)で比較的きれいに分離できることが見出せた.
1。はじめに
循環襲社会の構築をめざしブ廃棄物の抑制)リサイクル
化,再資源化に向けた取り組みが様々な分野ではじまって いる.容器包装や家電などの分野では,リサイクル対策の 推進が法規㈲によって義務付けられている1)
家具分野では現在法規制はなされてはいないもののタ 省
資源化や長寿命化を図るなど廃葉物の発生を抑㈲する対策
が推奨されている‖.そのため日常の使用時は機能性や安
全性が充分に確保され,修理などのメンテナンス時や廃棄
時には分離分別が容易に行える構造設計が望まれるJ 椅子やソファなど木製個物家具の場合き廓面クッション
材のへたりが原因で良好な弾力性が損なわれるために廃棄
するケースが多々あるといわれる。そこで今回はクヅショ
ン材の修理を想定して,木材に接着接合されたウレタンフ ォームを容易に分離する方法について検討することとした.
接着接合部を分離する方法としてはプ機械的な方法,物
理的な方法,化学的な方法など2)が知られている。合成ゴ ム系溶剤型接着剤を用いる今回の実験ではブ その接着剤の
性質を考慮して物理的な方法,特に加熱して軟化分離する
方法を採用した。また接着剤のはく雛を促進させるピール
ノブヅププライマー3、、としての役割を検討するためにプ接着 剤を塗布する前に木材表面にはポリエチレングリコ困ルの
水溶液を塗布することとした。この試薬は毒性や刺激性は ばとんどなく比較的安全性の高い物質ヰ)である。ロや皮膚 に触れた場合でも障害をおこすことはまずない巨木財分野
における利用用途としては含漬による寸法安定性の付与5) が知られている。
木材とウレタンフォ山ムの接着モデルをyi g−1に示すサ
2, 研究方法
2.1木材とウレタンフオⅦムの撞着性試験(常態時) 2.て.1試験片の作製
被着材としてハックベリー材(25×3×200私捌き 経木取
り)とウレタンフォーム(密度0,045j 25×ま0×350血m:
ブリジストン化成品西日本㈱製)を用いた。被着材の両者 にタロロブレンゴム溶剤替持養老斉り8那0緑(ノーテw一プ工 業㈱製,以下合成ゴム系接着剤と記す)をスプレー塗布し た(接着面は幅25×長150mm)。ハッタベリー材について
は接着剤を塗布する前に平均分子量購部巨カポリエチレン
ク、リコーール(以下PEGと記す)の5きi 勘15,20%水溶
液をハケで塗布したものとしないも託とを用いた♭ 接着剤 を塗布して約30分室温で乾燥させた後に貼り合せj ハン
ドローラーを用い約100Nで加圧接着したな なお各条件に
おける試料薮は5個とした。 2.仁2 書式験及び評価方法
接着性を評価する方法としてラJ すS K銅54接着剤のは く雛接着強さを評価する180度はく雛試験を基にしたむ 接 着接合後7日以上室温にて放置した試験片を引張り討凝潤
(従来型)
(はく雛促進型)
Fi g。1木材とウレタンフか−ムの接着モデル
平成12年度 研究報告 大分県産業科学技術センター
治異に取り付けた。万能試験機5568型(インストロンジャ
パン㈱製,以下万能試験機と記す)を用いてクロスヘッド
スピード100mm/mi nで引張り,最大荷重を求めた.
2.2 木材とウレタンフォームの加熱は〈離性試験
2.2.1試験片の作製
被着材としてハックベリー材(25×3×200m恥 柾木取
り)とウレタンフォーム(密度0.045,25×30× 350皿n)
を用いた。被着材の両者に合成ゴム系接着剤をスプレ… 塗
布した t 、接着面は幅25×良150m皿).ハックベリー材につ
いては接着剤を塗布する前にPEGの20%水溶液をハケ
で塗布したものとしないものとを用いた。接着剤を塗布し
て約30分室混で乾燥させた後に貼り合せ,ハンドローラ
ーを用い約川ONで加圧接着した。なお各条件における試
料数は5個とした.
2.2,2 書式験及び評価方法
はく酢容易性を評価する方法として,J I S K6854接着
剤のはく離接着強さを評価する180度はく離試験を基にし
た.接着剤塗布後7日以上室温にて放置した試験片を60,
100ぅ14()OCに設定した恒源塩燥磯MOV−212型(三洋電気㈱ 製,以下恒温乾燥機と記す)で5分間加熱した後取り出し,
さらに1分間放冷したものを引張試験用の治異に取り付け
た。万能試験機を用いてクロスヘッドスピード100mm/mi n
で引張りはく離接着力を求めた.はく離接着力は少なくと
も100皿血のはく離長さにおける平均はく離力(Ⅳ)で求め た。また試験条件によっては接着面がはく離せずにウレタ
ンフォームが切断する場合が認められたがその場合は最大
荷重を求めた。なお接着暦の温度変化については,被覆熱
電対線を試験板の中央部に取り付けて測定した.
3。 結果と考察
3.1常態時の接着強さについて
加熱による分離の容易性を検証するためにハックベリー
材には前処理として様々な濃度のPEG水溶滴を塗布乾燥
させた。ぎ皇g。2に常態時の接着強さ(180度はくり接着強
度)を示す。なお試験片のPEG平均塗布量は58g/mZ,ま
た接着剤平均塗布量は120g/m2である.いずれの試験片も 引張り操作によって最終的にはウレタンフォームがⅦ断し
て試験を終えた匂 強度値はPEG塗布による処理の/首無に
関わらず33.4∼35.5N(平均値)とほぼ同様の値を示した。
また接着層の状況は芦 PEGを塗布しない試験片)5%水
溶液及び墨%水溶液を塗布した試験片には接着はく離は認
められなかったがヌ ー5%水溶液は塗布した試験片は接着幅 の用%程度J また20%水溶液を塗布した試験片では接着幅
の50%梓度に接着はく離が確認できたむ
PEG塗布による処理の有無に関わらず強度値がほぼ同
様であった理由としては,木材とウレタンフォームの接着
︵訳︶甚︶州道斡璧二∪
︵
Z
︶撃廻感︰◎
い
ト
︵
h
U
4
未 5% 1哨 15% 2硝
PEGの水溶液濃厚 Fi g.2 木材−ウレタンフォームの接着強さ
接合部で分離がはとんど進行せず,結果的にウレタンフォ
ームの引張り試験と同様な試験操作となったためであると
思われる.すなわち今回の実験で求められた強度値はウレ
タンフォームの引張り破壊荷重を示しているものと考えら
れる白 木材とウレタンフォーム間の接着力は今回求められ
た強度値(ウレタンフォームの引張り破壊荷重)よりも大 きい値となることが予想され,このことから常態時に使用
する場合20%水溶液程度のPEG濃度であれば強度低下は
おこらないものと判断できる.
接着接合部のはく離状況については,PEG濃度が高く
なるに従って分離しやすくなる傾向を示した。接着力が発
揮される因子のひとつに投錨効果6)が関与しているといわ
れているが,PEGを塗布することにより木材表層にPE
Gの膜が形成され,接着剤が木材に浸透する量が制限され
たためではないかと想像できる。今回の実験では実証され
ていないがより高濃度のPEGを塗布することによって,
木材と接着剤との界面で働く分子間引力を低】F7)させるな んらかの作用が生じているものと考えられる.
3.2 加熱による接着はく離の促進について
Fi g。3に木材とウレタンフォームを接着接合した試験片
の加熱後のはく離状況をフ またFi g.引こは接着層の温度変
化の状況を示す。なお試験片のPEG平均塗布量は67g/m2,
また接着剤平均塗布量は144g/m2である。■ PEGを塗布し
た試験片はいずれの加熱条件の場合においても木材とウレ
タンフォー、ムがきれいに分離され〕ピールアッププライマ
ーとしての役割を果たすことが確認できた.はく離接着力
は加熱温度が高くなるに従って低くなる傾向を示し,
1400Cの恒温乾燥機で5分加熱した場合は5.81N(平均値)
という値で分離できた& 一方PEGを塗布しない試験片は,
加熱温度が高くなるに従って弓ほ長り操作の初期にははく群
が認められるものの途中ではく離しなくなり,いずれの加
熱条件の場合においても最終的にはウレタンフォームが切
平成72年度 研究報告 大分県産業科学技術センター
PEG
末塗布材 … PEG
塗布材
0
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PEG塗布材 PEG未塗布材 10
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︵訳︶轟︶悪在摂望︰□
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● − ■ ・ − ■ ■  ̄  ̄ 、一 一  ̄ 、
0 1 2 3 4 5 6
加熱及び放冷暗問(分) Fまg。7 接着層の温度変化 60 100 140 60 100 140
加熱温度(OC)
Fi g.6 加熱による接着はく離状況
を塗布した場合でも強度低下は認められなかった。
今回は小サイズの試験片を用いた実験であったため熱源
として恒温乾燥機を用いた.しかし大型の家具を対象とす
る場合には,ホットエアガンなどを熱源に用い集中的に加
熱するほうがより実用的であると考えられる.今後も引き
続き検討を加えていきたい.
実際のところ木製脚物家具は様々な接合技法の組み合わ
せによって一つの構造体が形成されている.分属する隠そ
れぞれの持合箇所において適切な方法を採用していくこと
はたいへんなことである今 できれば最初から分離分別がし
やすいような構造設計がなされていることが効率的である
と思われる.
5.謝 辞
本研究の遂行にあたり,接着剤を提供していただいたノ
ーテ… プ工業株式会社の皆様にお礼申し上げます±
参考文献・資料
1)循環型社会関連6法案:ht t p://ww閣∴r eCyCl e,gr 。j p/
迅aj i me21.ht 皿1
2)井上雅雄:先端接着接合技術}(2000),P69−72)拓)
エヌジーティー.
3)沖津俊直:接着剤の実用知識(第2版),(ま996),p
83−84,東洋経済新報社.
4)ニッサンポリエチレングリコール:日本油脂㈱.
5)後藤輝男他:木材利用の化学,(1986),p264−268,
共立出版㈱.
6)小野呂孝:新版接着と接着剤,(1991),p2,(財)日
本規格協会
7〉堀岡邦典他:東京農工大学農学部演習林報告,p18−
19,(1966). 断した.実験で求められた強度値さま,ウレタンフォームの
弓ほ良破壊に伴う値であり,加熱温度の高低によって強度値
に差異が生じたのはウレタンフォー、ムの加熱の程度によっ
て耐久性に優劣が生じたためであると思われる.
合成ゴム系接着剤はもともと耐熱性に劣り,加熱するこ
とによって溶融化する傾向がある.加熱溶融によって接合
接着強度は低下する傾向を示すと思われるが,しかし木材
表面に塗布した接着剤が木材表面からきれいにはく離する
までには至らない.
PEG塗布した試験片では,分離されたウレタンフォー
ム側に接着剤が付着していることが確認できた.すなわち
木材とPEGの界面あるいはPEGと接着剤の界面ではく
離現象がおこっていると考えられる.PEGが木材側に付
着しているのか接着剤側に付着しているのか,またなぜ分
離しやすくなるのか今回の実験では実証されていないが,
平均分子量4000のPEGの融点は53∼560C4〉であることか
ら,接着層の温度がおよそ600C以上に加熱されることによ
り溶融化現象が生じ,常態の場合以上に界面はく離がしや
すい状況となっているものと考えられる.
4.まとめ
容易に分離できる木材とウレタンフォームの接着手法を
検討した今回の実験により以下の結果が得られた.
(1)前処理としてPEGの水溶液を木材表面に塗布した
場合,接着層を加熱することによって木材とウレタンフォ
ームはきれいに分離された.
(2)はく離接着力は加熱温度が高くなるに従って低くな
る傾向を示し,接着幅25皿mの試験汁を1400Cの熱風乾燥機
で5分加熱した場合5.81Nのはく離接着力(平均値)で分
離できた.
(3)常態時における接着強さはPEG塗布による処理の
有無に関わらずほぼ同様な値を示し,PEGの20%水溶液